自重系トレーニングで筋肥大させる方法

トレーニング

筋肉を大きくする筋肥大は、ウエイトトレーニングでしか起きないと思われている方もいるかもしれません。

確かに、ウエイトトレーニングでは特定の部位を狙って鍛えることができるので、短期的な効果が出やすいのは事実です。

しかし、自重系トレーニングも、筋肥大のメカニズムを知れば筋肥大させることは可能です。

今回は筋肥大のためという視点で、自重系トレーニングの取り組み方について解説します。

筋回復のためのタンパク質摂取についてはをタンパク質の摂り方【一日の摂取量とタイミング】参考にしてください。

筋肥大のメカニズム

筋力トレーニングで鍛える筋肉とは、一般的に骨格筋のことを指します。

骨格筋は、筋繊維という直径50〜100μmの細長い1本の細胞が束になった筋線維束からなり、筋繊維は筋原線維の束でできています。

この筋原線維は、アクチン、ミオシンと呼ばれる収縮タンパク質から成り立っています。

ミオシンは所々にクロスブリッジという突起が突き出ており、この突起がアクチンと付着して結合状態を形成し、アクチンを引き込むようにしてスライドすることで筋収縮が起こります。

繰り返し筋収縮を行うとリボソームというタンパク質を合成する工場が活性化します。継続して行うことでリボソーム自体が増え、結果アクチン、ミオシンの量が増え、結合状態が増加することで筋繊維が肥大します。

筋繊維の肥大が頭打ちになると、筋繊維の外側に付着している筋サテライト細胞が細胞分裂し、筋繊維に融合してさらに肥大します。

ここまでで起きていることは、筋繊維1本1本の肥大です。

次に、筋サテライト細胞はさらに分裂して細胞核を増やし、筋サテライト細胞どうしが集まって筋管細胞となり筋繊維に成長します。つまり、筋繊維数が増加するのです。

このように、筋肥大には2種類あり、筋繊維1本1本の肥大と、筋繊維数の増加です。

ただ、筋繊維数の増加については数パーセン程度のため、筋繊維1本1本の肥大が大きく関与していると考えられています。

因みに、一度増えた筋繊維はその後減ることなく10年以上残るため、筋トレ再開時に筋肉がつきやすくなります。

この筋繊維数の増加が、マッスルメモリーの一翼を担っていると考えられています。

速筋を鍛える

筋繊維一本一本の肥大について更に詳しく解説します。

筋繊維はミオシン重鎖の種類により速筋繊維と遅筋繊維、混合繊維に分類されます。肥大しやすいのは速筋繊維であり、これをいかに刺激するかがポイントとなります。

図では混合繊維を省略していますが、一つ一つの速筋繊維が大きく変化することで筋繊維が肥大する仕組みを示しています。

筋力トレーニングの初期は神経系が改善され、次に筋繊維の動員増加が起こり、最後に筋肥大が起こります。

神経系の改善は、これまで使われてこなかった筋肉がトレーニングにより刺激され、脳から送られる信号が正しく伝わるように改善されることです。

どのようにして神経系が強化されるかについては【参考】筋力トレーニングで神経系を強化する方法を参考にしてください。

次に起こる筋繊維の動員は遅筋繊維から速筋繊維の順番で増加します。

そのため速筋繊維を肥大させるためには、速筋繊維をできるだけ早く、限界まで動員させる必要があります。

回数とセット数

効率的に筋肥大させるには、6〜12回(初心者は8〜12回)の反復しかできない負荷がベストです。(〜15回とする専門家もいます。)

3セット行えば、筋繊維が総動員され、遅筋繊維から太くするための速筋繊維までが刺激されます。(多数の研究報告をまとめたメタアナリシスによるエビデンスあり。)

25回以上の低負荷で筋肥大させるには、正しいフォームでできなくなるまで、つまり筋肉の限界までやれば速筋繊維の刺激になります。

ポイントは筋肉の限界まで行う(オールアウトする)ことです。

10回×3セットを行っても、それが限界でなければ速筋繊維の刺激は不十分であり負荷を上げる必要があります。

自重系トレーニングであれば負荷の高いステップに進み、ウエイトトレーニングであれば重量を増やして調整します。【参考】自重系トレーニングの効果とおすすめの種目

10回×3セットを目安としながら、オールアウトを一番の目標にして行いましょう。

目的別の実施回数を詳しく知りたい方はを【参考】筋トレで効果が出る1セットの回数や負荷の大きさとは?参考にしてください。

セット間のインターバル

筋肥大の効果を考えると、筋トレにおけるセット間のインターバルは、3分から5分程度が最も効果的です。【参考】最も効果的な筋トレのインターバル(セット間の休憩時間)とは【何分?何秒?】

ある程度疲労を残して次のセットに取り組むことで、代謝産物が除去されずに脳に疲労を回復させるシグナルが伝わり、筋肥大のアシストとなりますが、トレーニングの総負荷量を最大化しオールアウトを目指すのが最も効果的です。

エキセントリック収縮の効果を活かす

筋力トレーニングのネガティブ動作で起こるエキセントリック収縮(伸張性筋収縮)は筋肥大に大きく影響します。

ネガティブ動作とは、懸垂であれば体を降ろす時の動作で、このとき筋肉は縮んだ状態から力を出しながら引き伸ばされます。

動員される筋繊維の数が少ないため、筋線維の微細な損傷が次々と起こり、速筋繊維の登場を促します。

体を降ろす動作に特に意識を向け、ゆっくり2秒以上かけるとエキセントリック収縮の効果が得られます

大筋群を鍛える

自重系トレーニングで筋肥大させる一番のポイントは、筋肉の限界まで行うことです。

そのためには、胸筋などの大きな筋肉である大筋群から鍛えることが重要です。

大筋群は、小筋群と呼ばれる小さな筋肉より疲労しにくく、小筋群から鍛えてしまうと筋肉の限界をまで大筋群を鍛えれないといったことが起きます。

この大筋群を鍛えるときは、多関節種目を優先すると効率的に刺激を与えられることが分かっています。

腕立て伏せ、懸垂、スクワットなどの自重系トレーニングは、大筋群に効果がありかつ広範囲を同時に鍛えることができるため、積極的に取り入れるといいと思います。

【参考】自重系トレーニング腕立て伏せのやり方を参考に、ぜひ取り組んでみてください。

「回数とセット数」で解説したとおり、オールアウトするまで取り組むことが最も重要です。

まとめ

今回は自重系トレーニングにより筋肥大する方法について紹介しました。

筋肥大のトレーニングと言うと、見た目を重視した使えない筋肉をつくるトレーニングだと考える人もいるかもしれませんが、筋トレの一番の目的である筋力の増強は、神経系の強化と筋肥大の結果として得られるものです。

スポーツに必要な筋力増強に限らず、高齢の方が日常生活に必要な筋力を維持し向上させるためにも筋肥大は欠かせないものです。

記事について以下にまとめます。

  • 筋肥大には筋繊維1本1本の肥大と筋繊維数の増加がある
  • 筋肥大しやすいのは速筋繊維である
  • 6〜12回が限界の負荷で3セットが効果的
  • オールアウトさせれば回数に関係なく効果が出る
  • エキセントリック収縮を取り入れる

これらの点に意識しながら、トレーニングに取り組んでみてください。

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