試験や大会本番になると緊張して本来の実力が発揮できないな〜。
思い通りにいかないことばかりでイライラするな〜。
やることがたくさんあって頭がいっぱいよ。
そんな人に、深呼吸により心と身体をフラットにする方法や効果について紹介します。
やり方だけ知りたい人は、目次から飛んでください。
呼吸の役割
私達は呼吸により空気を肺に取り入れ、血液に乗せて数十兆もの全身の細胞に酸素を送ります。
その1日の呼吸数は、約2万回。
その影響力ははかり知れず、1回1回の呼吸の質が重要です。
不随意筋に働きかける
私達の体の筋肉には随意筋と不随意筋があります。
意識して動かすことができる筋肉が随意筋、意志に関係なく自律神経により動く筋肉が不随意筋です。
体の外にある手足の筋肉が随意筋、心臓など内臓は不随意筋により動いています。
呼吸筋である横隔膜と外肋間筋は不随意筋であり、呼吸は自律神経の支配下にあります。
ただ、脈拍は走ったり動いたりすることなく、意識するだけでは早くしたり遅くしたり、リズムを変えることはできませんが、呼吸は完全ではありませんがある程度意識的に操作が可能です。
深くゆっくり吸うこともできますし、浅く早く吸うこともできます。また、息が続く限り止めることも可能です。
呼吸は、不随意筋に唯一働きかけることができるのです。
自律神経に支配されている不随意筋に働きかけることができるということは、つまり、呼吸をコントロールすることにより自律神経に影響を与えることができることを意味します。
自律神経との関係
自律神経には交感神経と副交感神経があります。
交感神経が優位な状態は、活動モード。副交感神経が優位な状態は、リラックスモードです。
交感神経が優位だと、呼吸は浅く、早くなります。
活発に活動するときだけでなく、極度の緊張状態や、不安感、心配感が強いときもこの浅く早い呼吸になっている状態です。
副交感神経が優位だと、呼吸は深く、ゆっくりになります。
深い呼吸をすると、体の内部では肺の下の横隔膜が上下運動を始めます。また、息を吐くときの腹圧によっておなかの奥の胃腸などが刺激され、軽く内臓マッサージしている状態になります。
その結果、 内臓の血流量は自然に増し、体はよりリラックスした状態になります。
浅く早い呼吸をすれば交感神経を優位にし、深くゆっくりした呼吸をすれば副交感神経を優位にできるということです。
深呼吸の効果
程よい緊張
緊張は決して悪者ではありませんが、極度に緊張した状態は成果に悪影響を及ぼします。
顔が赤くなり、手には汗がじっとり、体の筋肉はガチガチで、足は地につかず、息は浅く「はっ、はっ、はっ」といったイメージでしょうか。
まさに戦闘モードです。
狩猟時代であれば、赤くなって相手を威嚇し、武器をしっかり握り、瞬発的に動くことで敵を仕留めるために必要な機能でした。
しかし現代ではそこまでの緊張は必要なく、適度に緊張した状態が求められます。
極度に緊張した状態とは、自律神経における交感神経が過度に優位な状態です。
深呼吸により強制的に副交感神経を適度に高めることで、結果的に程よい緊張になります。
怒りをコントロール
怒っているときは、大脳皮質にある「大脳辺縁系」が活動しています。
深呼吸は大脳皮質の活動を弱める効果があります。
怒りとは、人間だけでなく哺乳類ならどんな動物でも持っている機能です。
つまり人間をはじめ各種哺乳類は、生まれながらに「イラっとする」動物なのです。
怒っているときは、意識するのは難しいですが、呼吸は早く浅くなっています。まさに交感神経が優位に働いている状態です。
怒りの対象に焦点が絞られ、周りがよく見えない状態。敵と対峙している状態です。
だだ、この「イラッ」とする感情は、3~5秒という短い時間で起こるため、うまく対処すれば怒りを収めることができます。
深呼吸で副交感神経を優位にすれば、自然と怒りの感情は消えていきます。
α波が脳にいい影響
東邦大学医学部研究で、被験者に1分間に3~4回のペースで深呼吸をしてもらったところ、リラックスしていることを示す α 波が増加したそうです。
α波はリラックスしていたり集中したりしているときに出る脳波です。
α 波とともに活性化するのが「右脳」で、アイデアがひらめいたり、直感力や創造性が高まったりするため、広い視野で総合的な思考を働かせることができるようになります。
深呼吸はα波を増加させ、感情を抑え、思考力を高める効果があります。
α波は瞑想でも増加することが分かっています。瞑想については【参考】疲労に強い脳を作るマインドフルネス瞑想法のやり方、【参考】忙しい人のためのマインドフルネス瞑想法のやり方と効果を参考にしてください。
血行を良くする
腹式の深い呼吸をすると、横隔膜がよく動くため、「PGI2(プロスタグランジンアイツー)」という物質が増えることが分かっています。
この物質の役割とは、血管を拡張してゆるませ、血流をよくすることと、血小板が集まりすぎるのを抑え、血栓のリスクを下げることです。
意識して深い呼吸をすると、血栓予防のための物質を体で作り出すことができるのです。
深呼吸のやり方
30秒1呼吸丹田呼吸法
丹田とは、「おへその下にあるツボ」のことです。
丹田の位置は、「ヘソ下3寸」とよく表現されます。
おへそから握りこぶし一つ分下、またはおへそから指3本分くらい下と覚えましょう。
紹介するのは25秒でしっかり吐き5秒で深く吸うという呼吸法です。
①姿勢を整える
頭を天から引っ張られるイメージで背筋を伸ばします。
座ってやるときは背もたれにもたれず膝を軽く開きます。
②丹田の位置に手を置く
右手の中指をおへそに置きます。
左手の指3本を右手の中指の下に置きます。
右手を握りこぶしにして左手の薬指の下に置き、左手を開いてその上に重ねます。
③朝日をイメージする
朝日に照らされる気持ちのいい朝をイメージします。
④25秒間かけて吐く
ストローをくわえて風船を膨らませるように「ふーーーっ」と丹田を使って息を吐きます。
肛門 を締めていき、吐ききる直前に肛門はキュッと締めます。
息を吐き終えたらすっと力を抜いて肛門をゆるめます。
⑤5秒間深く吸う
おなかを膨らませながら鼻から息を吸います。
⑥10〜20回繰り返す
5分から10分間かけて実施します。
場所と時間を決める
起床後や就寝前の静かな場所や、昼休憩など決められた時間に決められた場所で行うことをお勧めします。
習慣化することで効果が高くなります。
個人的には、朝起きて布団をたたみ、窓を開けて朝日に向かって行うとやりやすいと思います。
私はそのまま瞑想に入ることを習慣にしています。
1分3回呼吸法
1分間という短い時間でできる呼吸法です。
①10秒かけて吐く
口をすぼめて10秒間かけて息を吐きます。
②さらに5秒吐く
肛門を閉める意識で空気を出し切ります。
③5秒で吸う
お腹を膨らませて5秒かけて鼻から息を吸います。
④3回繰り返す
どこでもできる
1分間という短い時間なので、どこでもできます。
どこでもできるだけに忘れてしまう可能性もあります。
日常の生活に関連付けてルールを決めると習慣化に役立ちます。
例えば、トイレに入ったとき、椅子から立ち上がったとき、水分補給をしたときなど、呼吸に意識を向けるタイミングを決めておきます。
他には苦手な人を見たら実施すると決めておくのもいいかもしれません。
相手に対する怒りなどのネガティブな感情が緩和されます。
ポイント
「呼吸」は「呼息」と「吸息」を合わせたものです。
「呼息」とは息を吐き出すことで、「吸息」とは息を吸い込むことです。
「呼息」が先で「吸息」が後です。
人は産まれるとき、羊水を吐き出し「おぎゃー」と産声を上げ、死ぬときは息を引き取ります。
吐くほうが先、吸う方が後です。
深呼吸で意識する一番のポイントは全ての息を吐ききることです。
ゆっくり、深く、静かに意識を持ちましょう。
息を吸う時に交感神経が活発になり、吐く時に副交感神経が活発になるため吐く方を特に意識します。
吸うときはお腹を膨らませることで鼻から自然に空気が入ってくるイメージを持ちます。
鼻には、粘膜、鼻毛、鼻甲介という異物を除去する機能が備わっているため、空気中のホコリやダニなどを取り除き、きれいな空気を吸うことができます。
呼吸法で不動心を培う
呼吸法の歴史は古く、瞑想法とともに約2500年前の釈迦の時代から始まります。
呼吸法は「今」という瞬間に意識を向ける手法でもあります。
今に意識を向けるということは、過去の人間関係などの不満から離れ、まわりに振り回されない不動心を培うことになります。
瞑想法と深く繋がりがあり、組み合わせて行うことで更に高い効果が得られます。
ぜひ生活の一部に取り入れ、何事にも動じない心を手に入れましょう。
以下に参考にした文献を紹介します。
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