は〜、眠いけど家事も育児もあるな〜。
寝てる場合じゃない、明日の試験までに完璧にしなきゃ。
またやってきた、この不毛な時間。眠気との戦いだ!
多くの方が経験済みの眠気。現在進行形で眠気に悩まされている人も多いのではないでしょうか。
眠気のせいで、やりたいこと、やらなければならないことが思うようにできないのは、「睡眠」に支配された状態だと言えます。
運転中に訪れる睡魔など、眠気は突然に訪れ、生理現象であるため逆らえないものだと考えられていますが、「眠気」のメカニズムを知り、仮眠を主体的に取り入れることで、「睡眠」はコントロールできます。
仮眠がもたらす効果と具体的な方法について紹介します。
睡眠時間の現状
推奨される睡眠時間
仮眠について考える前に、夜の睡眠自体について整理してみたいと思います。
厚生労働省は睡眠時間についてホームページで以下のように発信しています。【参考】健康づくりのための睡眠指針2014
個人差はあるものの、必要な睡眠時間は 6 時間以上 8 時間未満のあたりにあると考える
厚生労働省健康局「健康づくりのための睡眠指針2014」平成26年3月、https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-10900000-Kenkoukyoku/0000047221.pdf、(参照2023-7-7)
のが妥当でしょう。
また、睡眠時間と健康に関するいくつかの研究を紹介します。
- 7時間より長過ぎても短か過ぎても死亡率、糖尿病、高血圧の発症率は高くなる。(2012年の研究)
- 睡眠時間と1年後の肥満発症率の関係は、7〜8時間に比べ、6時間未満で1.5倍、5時間未満で2倍高くなる。(2010年、健常な成人日本男性31477名対象とした研究)
- 睡眠時間5時間の人の血中レプチンレベルは睡眠時間8時間の人と比べて18%低く、グレリンは15%高かった。レプチンは食欲抑制、グレリンは食欲亢進に関係。結果食べすぎてしまうと考えられる。(1000人以上、成人を対象とした研究)
- アルツハイマーの原因であるβアミロイドは、6時間より短い人、睡眠の質が低い人ほど増加する。
- 睡眠不足はコルチゾールの分泌を増やす。筋肉の分解を促し、成長ホルモンの分泌を抑える。
国の見解とこれらの研究結果から、6時間から8時間の睡眠が適当であり、この範囲より短くても長くても望ましくなく、合わせて睡眠の質も重要と言えます。
睡眠時間の実態
それでは厚生労働省が発表している「令和元年国民健康・栄養調査報告」でその実態を見てみましょう。【参考】令和元年国民健康・栄養調査報告
なお、令和2年、3年は新型コロナウイルスのため未実施、令和4年は調査中です。(令和5年9月現在)
20歳以上を対象とした生活習慣調査において、6時間から8時間の睡眠がとれている人の割合は、各年代を通して概ね全体の約5割という結果です。
また睡眠の質についての調査では、日中に眠気を感じたり、睡眠途中に目が覚めて困ったりしたといったことがなく、質のいい睡眠をとれている人の割合は全体で3割程度しかいません。
つまり、日本人の約半数の人は十分な睡眠時間が確保できておらず、睡眠時間がとれている人でもその半数近くは質のいい睡眠がとれていないということになります。
また調査対象として単身赴任者が除かれていたり、忙しい人ほど回答出来ないであろうことを考慮すると、これより更に悪い結果となるのではないかと推測されます。
日本人の多くは慢性的に睡眠不足であり、それを補うためにも仮眠が必要だということです。
眠気のメカニズム
日中に起こる眠気には二つの原因が考えられます。
- 睡眠時間と質の不足
- 過度の疲労
睡眠時間と質の不足
人は遺伝子にサーカディアン・リズムと呼ばれる体内時計を組み込んでいます。
この体内時計によるの眠気のピークは1日に2回あり、1回目は昼の2時から4時、2回目は朝の2時から4時です。
夜の睡眠がしっかり取れている人は問題ありませんが、不十分な人はこのピークに合わせて強い眠気が訪れます。
先に説明したとおり多くの日本人は寝不足です。
このサーカディアン・リズムと睡眠不足により眠気が発生します。
過度の過労
疲労にはサインがあります。
単純作業などで脳が疲労を感じてくると、最初は「飽きる」という疲労のサインが出ます。
「飽きる」状態をそのまま継続していると次に訪れるサインは「眠くなる」です。
みなさんも経験があるのではないでしょうか。単純作業の末にそのままウトウトしてしまったり、高速道路で同じ景色に飽きて眠気に襲われたり。
これは疲労から脳を守ろうとして防衛反応が働くためで、さらに進むと「視野が狭くなる」という現象が起こります。
人間は情報の9割を視覚から得ているので、強制的に視覚からの情報をシャットダウンして脳の情報処理を休ませようとしているのです。
この過度の疲労が二つ目の発生原因です。
仮眠の効果とやり方
仮眠がもたらす効果
今や数々の世界トップ企業が仮眠を推奨していることをご存知でしょうか。
昼の仮眠は夜の睡眠の3倍の効果があると言われています。
仮眠には、眠気の回復だけでなく、脳疲労、認知能力の改善、思考力、理解力の向上、アンチエイジングといった効果があります。
一般的には20分程度の仮眠が推奨されていますが、さらに短い時間でも眠気に対する効果があることを示す一例を紹介します。
1965年、アメリカの高校生ランディー・ガードナー君は、断眠の世界記録に挑戦し、264時間12分という約11日間の断眠に成功しました。
成功の秘訣は、マイクロスリープにあったそうです。
マイクロスリープとは、数秒から10秒程度の非常に短い睡眠のことです。
睡眠とはいっても、通常考える意識のない眠りとは違い、目をつむるだけの瞑想に近い眠りです。
ガードナー君は、強烈な眠気に襲われた時、「ただ目を休ませたいだけだ」と言って、しばらく目を閉じてじっとしていたそうです。
マイクロスリープにより断眠の世界記録を樹立したのです。
因みにこの世界記録はいまだに破られていません。
仮眠には不足している夜の睡眠を補い脳を回復させる効果と、視覚から脳に送られる情報を遮断して脳を休ませる効果があるのです。
積極的に取り入れたい20分仮眠法
それでは一般的に推奨されている20分仮眠法のやり方について解説します。
20分仮眠法のポイントは3つです。
① 仮眠の時間は20分間とする。
② 昼の15時を超えない。
③ 横にならず、座ったまま実施する。
この3点をしっかり守ってタイマーなどを活用して行えば、起きられないということもなく、スッキリと目覚められます。
逆に入眠して30分を超えると深い睡眠である徐波睡眠に入ってしまい、仮眠の覚醒効果が得られず、かえってぼーっとした感覚が強く残ります。
ノンレム睡眠にはN1〜N4という眠りの深さのステージがあり、入眠から25分程度続くN2のステージにいるときに目を覚ますのが適当です。
また、次の研究結果があり、こうした健康被害も考えて、20分が適当だと考えられています。
- 毎日90分の仮眠を取っている人は、30分以下の仮眠を取っている人に比べて病気になりやすい。
- 毎日1時間以上の仮眠を取っている人は取っていない人に比べて、約2倍、認知症になる確率が高まる。
- 毎日30分以下の仮眠を取っている人が認知症になる確率は、仮眠を取っていない人の5分の1以下になる。
さらに覚醒効果を高めたい人は、仮眠直前のコーヒーをお勧めします。
カフェインの効果は飲んで30分程度経った頃から現れるため、さらに気持ちよく目覚められます。
もしどうしても眠れない人は、目を瞑っているだけでも十分です。
脳の疲れがとれて働きも向上するという研究報告があります。
慣れてくれば、20分間しっかりと入眠できるようになります。そのため目覚めのタイマーは必要です。
スマホでもタイマー機能がありますが、通知が仮眠の妨げになるので、純粋なタイマーをお勧めします。
こまめに取りたい1分間仮眠瞑想法
1分仮眠瞑想法とは、目を休ませることで、脳疲労を防ぎ、回復させる方法です。
ポイントは、眠気を感じる前に主体的にとることです。
私がこれまで読んできた疲労回復法、時間術、瞑想法などの本と合わせて考えると、次のように実施するといいのではないでしょうか。
① 15分、45分、90分の集中力が続く時間の間に実施する。
② 移動時間、休憩時間等の空いた時間に実施する。
③ 背筋を伸ばし、腹式呼吸で、呼吸に意識を向ける。
これなら仕事中で20分仮眠に抵抗がある人も実践可能です。
「①15分、45分、90分の集中力が続く時間の間に実施する。」については、集中力を高め維持する時間術で紹介していますので集中力を高めて物事に取り組みたい人は、こちらの記事を参考にしてください。
別の記事【参考】忙しい人のためのマインドフルネス瞑想法のやり方と効果のなかでも1分間瞑想法について紹介していますので、参考にしてください。
まとめ
- 睡眠時間は6〜8時間程度が推奨されている。
- 日本人の多くは睡眠不足である。
- 眠気はサーカディアン・リズムと疲労により発生するが睡眠不足が原因で強く現れる。
- 仮眠には眠気の回復だけでなく、脳疲労回復、思考力向上などの効果がある。
- 20分仮眠と1分間仮眠を効果的に使う。
夜勤の仕事や育児の関係で、どうしても睡眠時間を確保できない人にとって、睡眠に関する問題は身近なものです。
睡眠の必要性を訴える書籍やネット情報、研究結果は多く見かけますが、仮眠を絡めた健康に関する研究などはまだ進んでいないのが現状です。
睡眠時間が確保できない人を対象としたこれからの研究に期待したいところですが、現段階での効果がありそうな、20分仮眠法と1分間仮眠瞑想法をぜひ試して欲しいと思います。
特に深夜勤務のある交替制の仕事に従事している人は、一般の人に比べてがんを発症するリスクが高くなります。
前立腺がんの発症リスクは3倍、乳がんの発症リスクは約1・5倍に跳ね上がると報告されています。
しかしこれは、仕事として深夜勤務を選んだ時点で、避けられないリスクです。
だからこそ、そのリスクと向き合い、少しでも減らす必要があります。
仮眠が浸透しつつあるとはいえ、仮眠に対する印象はまだ良いとは言えません。
仕事中に権利として与えられた昼の休憩時間ですら、仮眠をとることをはばかられるのが今の日本の環境です。
しかし、仮眠により集中力を高めて仕事効率を高め、生産性を上げられることが分かっています。
たとえ変な眼で見られたとしても、それが仕事の成果につながり、自らの健康、人生につながるのですから、確固たる意志で実施するべきです。
古代、我々の祖先であるサルは、肉食動物に食べられる危険の中で睡眠をとっていました。
とても熟睡できるような環境ではなく、浅い眠りを何回かに分けてとっていたと考えられています。
いつからか熟睡できるような安全な世の中になりましたが、それでも遺伝子には当時の記憶が残されています。
数多いる動物の中で、ここまで深く眠る動物は人間だけでしょう。
そのように考えると、たとえ夜中の睡眠時間を十分に確保できなくても、仮眠とりいれながら休むことは、古代のサルの生活に戻ると言えなくもありません。
一方で、少し進化した類人猿は社会性を高度に発展させることで食物連鎖の頂点に立ったのであり、大量のエネルギーを消費する脳を休ませるには深く眠る必要がありました。
深く眠って肉食動物に食べられる危険を侵してでも、高度な脳を維持したほうが種全体として生存率が上がったとの考え方もあります。
進化の歴史の中では、深く眠る方が正しいとも考えられます。
まだまだ謎の多い睡眠ですが、新しい研究結果を元に更新していきたいと思います。
皆さんが睡眠をコントロールする生活を手に入れる手助けになれば幸いです。
最後に参考にした図書を紹介します。
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