筋力トレーニングの一番の目的は読んで字の如く、筋力の増強です。
スポーツでのフィジカル強化、日常生活のための機能的な体造り、ダイエットのための基礎代謝向上、高齢者の怪我予防などに筋力増強は必要であり、その筋力増強は神経系の強化と筋肥大による結果です。
筋力増強 = 神経系の強化 + 筋肥大
筋肥大のトレーニングについては別の記事で紹介していますので、この記事では以下について解説します。
- 神経系の強化とは
- 神経系強化のポイント
- 神経系を強化するトレーニング
神経系の強化とは
筋肉が動く仕組みとは、脳から出る信号を脊髄の神経細胞を経由し、末梢神経である運動神経を通して筋繊維に伝え筋繊維を収縮させるという流れです。
つまり、神経系は脳からの指令を筋繊維に伝える役割を担っています。
最大筋力を増大させるには、簡単に説明すると脳から筋繊維に伝わる信号の流れを良くするか、筋繊維自体を大きくするという2つの方法があります。
この脳から筋繊維に伝わる信号の流れを良くするというのが「神経系の強化」と呼ばれるものです。
もう一方の筋肥大(筋繊維自体を大きくする)については【参考】自重系トレーニングで筋肥大させる方法の記事で紹介しています。
神経系強化のポイント
神経系を強化して最大筋力を増大するためのポイントは3つです。
- 運動単位の動員数を増加させる
- 発火頻度を増加させる
- 運動単位を同期化させる
運動単位の動員数を増加させる
脊髄とつながる運動神経はいくつかの筋繊維と繋がっており、一つの運動神経が支配する筋繊維を運動単位と言います。
例えば、ある動作に関わる運動神経が100本あるとして、それぞれが4本の筋繊維を支配しているとします。合計で400本の筋繊維が存在する状態です。
運動単位が100であれば、脳からの信号が100本の運動神経を通して全ての筋繊維に伝わり、筋繊維400本全てが働きその時点での最大筋力が発揮できることになります。
しかし、運動単位が50であれば、半分の運動神経が信号を伝えず200本の筋繊維はさぼっている状態であり、半分の筋力しか発揮できません。
イメージしやすいようにすごく簡単に説明しましたが、実際には1本の運動神経が数十本の筋繊維を支配する「小さい運動単位」と、1本の運動神経が数百から数千の筋繊維を支配する「大きい運動単位」が存在します。
最大筋力を高めるには、大きい運動単位を含め、できるだけ運動単位の動員数を増やすことが必要ですが、筋肉は小さい運動単位から優先的に動員され、大きい運動単位は後から動員される仕組みになっています。
これをサイズの原理と言います。
この大きい運動単位を動員するには、高負荷低回数のトレーニングが必要です。
初めて行うトレーニングでは、小さい運動単位しか動員できませんが、トレーニングを始めて4週間前後は運動単位の動員数が増加しやすいことが分かっています。
トレーニング初期に腕立て伏せの回数が増えたり、挙上できる負荷が増えるのはこの運動単位の動員数の増加によるものです。
運動単位を同期化させる
運動単位の動員数が増加し、働く筋繊維が増加しても、それぞれがバラバラに動いていたら十分な力が発揮できません。
より大きな筋力を発揮するには筋繊維をタイミングよく収縮させることが必要です。これを運動単位の同期といいます。
トレーニング初期の能力向上は運動単位の動員数の増加に加え、運動単位の同期化が影響していると考えられています。
発火頻度を増加させる
脳や脊髄から送られる筋繊維への信号は、活動電位という形で運動神経を通して伝わります。
この活動電位が伝わる頻度を発火頻度といい、それぞれの運動単位の発火頻度が増加すれば運動単位同士のタイミングが合いやすく同期しやすくなります。
イメージとしては、10人が1分間にそれぞれのタイミングで5回手を叩くより、10回手を叩いたほうが何人かのタイミングが合いやすいように、できるだけ多く信号を送る方が同時に働く筋繊維の量は多くなります。
神経系を強化するトレーニング
神経系を強化するトレーニングのポイントは2つです。
- 最大負荷の90%以上の負荷で行う
- 反復回数4回以下が限界となるようにする
最大負荷の90%以上
ウエイトトレーニングを行う場合は、この90%以上を目安にして行います。
ベンチプレスで最大で100kgを1回挙げられるのであれば、90kg以上のウエイトでトレーニングをする。
初心者の方で50kgが1回挙げられるのであれば、45kg以上でトレーニングするという具合です。
トレーニングを進めていく上で、挙上できる負荷は上がっていくので、常に最大挙上負荷を把握しながらその90%の負荷で実施していくことが必要です。
反復回数4回以下
自重系トレーニングであれば、この反復回数4回以下を目安に行います。
この回数を大きく超えていくと筋肥大のトレーニングとなり、神経系強化の効果が低減します。
腕立て伏せであれば、膝をつけた腕立て、普通の腕立て、手をそろえて行う腕立て、片手腕立てなど、神経系の強化に伴いステップアップしていくことで反復回数4回以下に調整でき、効果的なトレーニングが行なえます。
自重系トレーニングの負荷を変える具体的な取り組み方についてはを【参考】自重系トレーニングの効果とおすすめの種目参考にしてください。
まとめ
最初に説明したように、筋力を最大限発揮するためには神経系の強化と筋肥大が必要です。
神経系は、運動単位の動員数、発火頻度を増加させ、同期させることで強化されていきます。
そのために効果の高いトレーニングは、最大負荷の90%、反復回数最大4回です。
筋肥大を求める人にとっても、神経系の強化により高重量が扱えるようになれば更に負荷の高いトレーニングが行えるため、相乗効果的に筋肥大に結びつきます。
神経系を強化するトレーニングは、高負荷を扱うため体への負担も大きくなります。
しっかりとウォーニングアップで体を温めてから怪我に注意して行いましょう。
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