統計的な幼児教育の一つの答え【学力の経済学 中室牧子】

読書

大学入試が新しくなり、2021年度から大学センター試験から大学入学共通テストに変わりました。

これまでの知識中心の問題から、思考力、判断力、表現力が求められる問題へと大きく変更され、2023年現在も手探りで行われている状況です。

この変更に合わせて、子供が通う小学校も30年以上前に私が学んだ内容と少しずつ変わってきているように感じます。

思考力、表現力を高めようという試行錯誤の取り組みが見られます。

親としても、何をどう教えればいいのか、どのように支援すればいいか悩んでいる人も多いのではないでしょうか。

そんな悩みに少しでも参考になればと思い、『学力の経済学 著・中室牧子』を紹介します。

この本では、幼児教育を中心に、データを収集した科学的根拠に基づいた意見が述べられています。

少し前に出された本ですが、いまだにランキングにも登場し、広く読まれており、電子書籍化もされています。

読了後の学び

  • 非認知能力が重要だと認識した。
  • 結果でなく行為を意識するように。
  • 統計学への興味が湧いた。
  • 教育投資の収益率について知った。

非認知能力が生涯に渡り社会的に成功するカギ

一番のポイントは、非認知能力というもが極めて重要であるということです。

非認知能力とは、学力テストに表れない、自制心や、やり抜く力といった、生きる力のことです。

その能力こそが、生涯にわたって社会的に成功する力となるそうです。

「自制心」は自立と自律を目指すモンテッソーリ教育で取り入れらており、やり抜く力は「GRIT」という本でその重要性や、伸ばし方について書かれているように、非認知能力についは近年重要視されつつあります。

長い目で見ると、この非認知能力がゆくゆくは、思考力や判断力、表現力を伸ばすことに非常に役に立ちます。

ただ、大切なことは理解しながらも、親としては、どうしてもテストの点数のような、目に見える眼の前の結果を重視してしまいがちです。

ではその力はどのように伸ばしていけばいいのでしょうか。

非認知能力の伸ばし方

① 褒美を与える

褒美を与えることで、学力が向上することが証明されているということです。

ただ、何に褒美を与えるかがポイントであり、結果ではなく行為に与えることが大切です。

「100点とれたから今日はステーキにしよう。」 ← 結果に与える✖

「1週間毎日取り組めたから今日はお寿司にしよう。」 ← 行為に与える⭕

② 褒める

誉め方が大切であり、もともとの能力結果を誉めるのではなく、頑張った行為を誉めることが効果的なのだそうです。

「ほとんど勉強してなかったのに、すぐ覚えたね。」 ← 能力を褒める。✖

「100点とれてえらいね。」 ← 結果を褒める。✖

「毎日30分、ちゃんと取り組めてすごいね。」 ← 行為を褒める。⭕

③ テレビやゲームを避ける

テレビやゲームの影響については、一概にいいとも悪いとも言えないという見解です。

我が家の教育としては、テレビは見たいアニメを本人が見たいといったときだけ見せることにし、週に合計して1時間も見ていないと思います。

ゲームも1、2回は欲しいと言ったことがありますが、結局買わず、もはや興味を失ったようです。

その分の時間を読書や運動、勉強に充てられるというメリットは個人的には大きいと思います。

一方で、テレビから得た知識を学校で友達から聞くこともあり、完全に悪いものだとも思いません。

結局は程度の問題、依存症にならない程度に、本人が自分自身を制御できる範囲で楽しめばいいのではないでしょうか。

以上の3点から言えることは、結果や能力などの分かりやすくて評価しやすいことに注目するのではなく、行動や努力など日頃から様子をよく見ていて、適時適切に声をかけることが一番大事なんだと思います。

子供と向き合い、承認し、尊敬する。

アドラー心理学でも大切にしているものですね。

統計に基づくから信頼できる

教育に関する本はこれまでたくさん読んできました。

その中で感じることは、教育についてはまだまだ確立されておらず、世の中にはさまざまな教育論、教育方法が溢れているということ。

ある本で推奨していることを、ある本では否定していたり、筆者個人の経験から方法や考え方を述べていたりして、何が正解かよく分からないということです。

学校教育の現場でも、実験によるデータを用いた議論が進んでおらず、個人の主観による政策が多く行われている状況です。(小学校教員、高校教員の友人談)

その点本書は、統計的に得られたデータからの教育論が書かれており、自分の子供にも効果がある可能性が高いと思われます。

統計的なデータなので、中央値から大きくはずれる人もいないわけではないのですが、個人的な教育論よりはいくらか参考になりそうです。

教育投資の収益率

子供を育てることは親の努めなので、教育にお金がかかることは仕方がありません。

多くの人は、教育費を必要な経費だと考えていると思います。

ただ、教育を投資だと考えると、そこには大きな収益、リターンが存在することに気が付きます。

特に小学校入学前の幼児教育の収益率は、それ以降より高くなるそうです。

大学の教育投資に対する収益率が、年率で男性6%、女性8%とされており、幼児教育がそれより高い収益率が見込まれるとすると、世界の成長率(年率5〜7%)より高いことになります。

一般的な世界経済に連動するインデックス型の投資信託に投資するより、教育投資に充てたほうがリターンが高いということです。

参考にしながら子供と寄り添った教育を

最後に、これらの研究データは、ほとんどかアメリカ等、海外のものである点には注意が必要です。

海外のデータを中心に書かれた本であり、そのまま日本人に当てはまるかどうかは少し疑問が残るところです。

遺伝的にも、生物学的にも、人種による差は大きいからです。

そのことは筆者も問題提起しています。

残念がながら日本では、まだまだ教育に関するデータが不十分であり、統計的な教育論は確立されていない状況です。

国の将来を考え、教育の質を上げるためにも、日本でも統計学的な取り組みが進んでいくことを期待するばかりです。

結局のところ、教育の参考にするには十分価値のある内容だと思いますが、絶対ではありません。本書の内容を取り入れつつ、子供の反応、成長を傍でしっかり見守ることが大切だと思います。

このことを考えると、子供が幼稚園に通っていたときの園長先生の言葉『親の子供の距離』を思い出します。

「未就園児からは肌を離すな。園児からは手を離すな。小学生は目を離すな。中学生以上は心を離すな。」

少しずつ子供と距離を開ながらも、しっかりと成長を見守ってあげられる親でありたいものです。

お勧めしたい人

  • 小さな子供を持つ親
  • 育児にどれだけお金をかけるか悩んでいる親
  • 小さな子供を持つ親

    たくさんの育児本が溢れる中で、何を基準にすればいいか悩む方もいると思います。

    統計的に確からしい方法が紹介されているので、この本を読んで実践すれば効果がでる可能性は高いと思います。

    これから必要になってくる非認知能力についてもとても参考になり、結果ではなく行為に目を向ける考え方は、子供との関係を築く上でとても大切だと思います。

    幼児教育については幼児教育に効果的な読書と読み聞かせについて【将来の学力は10歳までの「読書量」で決まる! 松永暢史】や賢い子に育てるための統計学的幼児教育【「賢い子」に育てる究極のコツ 瀧靖之】も参考になります。
  • 育児にどれだけお金をかけるか

    それぞれの家庭の懐事情にもよりますが、教育投資という考え方を持つことは必要です。

    教育投資で大きなリターンを見込めるということは、教育にお金をかけるかかけないかで、将来的な差が子供の頃からできてしまうことも暗に意味しています。

    ぜひ読んで、考えてみてほしいと思います。

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