「筋トレでは、3セット×10回を目標に実施しましょう」なんて言葉を鵜呑みにして、11回、12回と出来そうなのに、余力を残してトレーニングを終えてしまっていないでしょうか。
大きな胸筋をつくりたいのに、1日に腕立て伏せを100回して満足していないでしょうか。
こうした初心者にありがちな回数に関する間違いを正し、神経系の強化、筋力増加、筋肥大、筋持久力向上のそれぞれの目的に合った効果的な回数について解説します。
これを正しく知れば、自重系トレーニングで筋力を増加させることも筋肥大させることも十分に可能です。
回数のみ知りたい人は、目次から「目的別の実施回数」に飛んでください。
トレーニングの目的
筋トレをする一番の目的といえば、やはり筋力増強でしょう。
スポーツにおいて瞬発的なスピードやパワーを向上させたり、より重いものを持てるようにしたり、プランシェやマッスルアップなど、これまでできなかった力の必要な技を習得するには筋力増強が重要です。
自重系トレーニングに取り組んでいる人はこの筋力増強を目的としている人が多いと思いますし、個人的にも将来に渡って使える機能的な体造りのためにここを目的に行うことをお勧めします。
この筋力増強には、神経系の強化と筋肥大が必要となってきます。
神経系の強化と、筋肥大を目的としてトレーニングに取り組むことで、結果的に筋力増強が得られるというイメージになります。
神経系の強化+筋肥大→筋力増強
なかには筋肥大自体を目的としてトレーニングする人も多くいます。
ボディビルに代表されるような大きくてたくましい体をつくるためにはこの筋肥大が必要です。
ある程度であれば、筋肥大だけを目的にトレーニングすることはできますが、突き詰めていくと神経系の強化も組み入れていかなければ、適切な筋肥大は得られません。
最後に女性の多くが求める引き締まった体づくり、ダイエットのためには筋持久力を目的としたトレーニングを行います。
筋持久力の向上は持久系のスポーツにおいてもとても重要になります。
神経系の強化
神経系の強化とは、簡単に言うと脳から筋肉に指令を送る神経を強化したり発達させたりして、効率よく筋肉を動かせるようにするということです。
脳と筋繊維はいくつかの運動神経によって繋がっており、1つの運動神経が支配している筋繊維を「運動単位」という言葉で表します。
筋力トレーニングを行うとき、多くの筋繊維が働けば大きな筋力が発揮できますが、さぼっている筋繊維が多いと発揮できる筋力は小さくなります。
この筋繊維が働くか働かないかは、1つ1つの神経細胞が支配しており、運動単位を多く動員するにはこの運動神経が指令を送る機能を強化させる必要があります。
それぞれの運動神経は、脳や脊髄から送られてくる活動電位により発火して働くため、この発火頻度を高めることと、タイミングよく筋繊維に伝えることが大事であり、この二つを強化することが神経系の強化ということになります。
これらは「発火頻度の増加」と、「運動単位の同期化」という言葉で表現されます。
さらに詳しく知りたい方は【参考】筋力トレーニングで神経系を強化する方法を参考にしてください。
筋肥大
一般的に筋肥大と言われるものは、筋繊維が太くなったり筋繊維数が増えたりして筋肉量が増加することを指します。
筋肉量が増加するということは、1つの運動神経が支配する筋繊維の量が増えたり、筋繊維数が増えることで運動神経が増えたりするということであり、結果的に運動単位の動員数を増やすことになります。
つまり、筋肥大すれば筋力が増強されるということです。
筋肥大のメカニズムについては自重系トレーニングで筋肥大させる方法で解説していますので参考にしてください。
筋肥大のみを目的としてトレーニングを行う場合、筋肥大に効果的な1セット内での実施回数を下表で示していますが、先程述べたようにそれだけでは頭打ちしてしまいます。
最大負荷(1回だけ上げられる最重量)を上げていく方が効果が高いため、最終的には神経系のトレーニングを組み入れていく必要があります。
筋持久力の向上
持続して筋力を発揮するためには筋持久力を向上させる必要があります。
低負荷で高回数を長時間継続して取り組むことで、筋繊維内の毛細血管が発達して流れる血液量が増え、多くの酸素が取り込まれるようになり、持続して筋力が発揮できるようになります。
それほど筋肥大はせず、エネルギー消費が高いため、結果的にダイエット効果や、引き締まった体をつくる効果があります。
筋肥大など他の目的のトレーニングにより自然と筋持久力も向上できますが、筋持久力についてはそれのみを目的として行うことが一般的です。
目的のまとめ
以上の目的をまとめると次のようになります。
- 筋力を増強するためには、神経系の強化と筋肥大が必要である。
- 筋肥大するためには、神経系の強化も必要である。
- 筋持久力の向上は単独で考える。
目的別の実施回数
それぞれの目的別に、負荷の大きさと実施回数を示します。
負荷の大きさとは、ベンチプレスで言えば1度だけ挙上できる最大重量に対するパーセンテージを表しています。
負荷の大きさ(%) | 反復できる回数 | 主な効果 |
100 | 1 | 神経系の強化(筋力増加) |
95 | 2 | 神経系の強化(筋力増加) |
90 | 4 | 神経系の強化(筋力増加) |
85 | 6 | 筋肉量の増加(筋力増加) |
80 | 8 | 筋肉量の増加(筋力増加) |
75 | 10~12 | 筋肉量の増加(筋力増加) |
70 | 12~15 | 筋肉量の増加(筋力増加) |
65 | 18~20 | 筋持久力の向上 |
60 | 20~25 | 筋持久力の向上 |
50 | 30~ | 筋持久力の向上 |
ウエイトトレーニングであれば負荷の大きさを、自重系トレーニングであれば反復できる回数を参考に取り組みましょう。
限界を目指す
自重系トレーニングの場合は、反復できる回数が限界となるように種目を調整すれば、目的に合った効果が得られます。
神経系の強化を目的とすれば、1〜4回が限界となる種目を選択します。
筋肥大を目的とするのであれば、6〜15回が限界となる種目を選択します。
筋持久力を目的とするのであれば、18回以上できる種目を選択すれば効果が出るということになります。
セットが進むにつれ、目的に効果的な回数にならない場合がありますが、その場合は難易度の低い種目にして、反復できる回数が目的に合った回数となるよう調整します。
重要な点はただ回数を守るのではなく、力を出し切ったときの回数で調整することです。
自重系トレーニングの進め方については【参考】自重系トレーニングの効果とおすすめの種目を参考にしてください。
コメント