筋力トレーニングを始めてみたものの、「セット間の休憩時間はいったいどれくらいとるべきだろう?」という疑問を持つ人は多いと思います。
全力でトレーニングに取り組み、効果を最大限に引き出すためにはこのセット間の休憩時間であるインターバルの取り方がとても重要になります。
一般的によく耳にするのは、30秒、1分、90秒といったところでしょうが、果たしてこれは正しいのでしょうか?
結論をお伝えします。
多くの方がトレーニングの目的としているであろう筋肥大については3分程度が適切であり、その他目的に応じて5分までの間で調整するというのが最新の見解です。
理由について解説してきます。
根拠となる研究結果
短いインターバルの効果
これまで30秒などの短いインターバルが筋力トレーニングに効果があるとされてきた理由は、成長ホルモンによるものです。
インターバルが短時間の方が、長時間より成長ホルモンが増加するため筋合成を促進すると考えられてきましたが、2013年、アメリカのウエストバージニア大学の研究で否定されています。
Post-exercise increases in circulating hormones are not related to hypertrophy following training.
Mitchell CJ, Churchward-Venne TA, Bellamy L, Parise G, Baker SK, Phillips SM (2013) Muscular and Systemic Correlates of Resistance Training-Induced Muscle Hypertrophy.
【翻訳】運動後の循環ホルモンの増加は、トレーニング後の筋肥大とは関係ありません。
【参考】https://journals.plos.org/plosone/article?id=10.1371/journal.pone.0078636
筋肥大を目的とした場合、短いインターバルの効果はないと言えます。
一方で、筋持久力を目的とした場合はできる限り継続して動き続けることが効果的なため、インターバルを短くすることが推奨されています。
1分間と3分間の比較
2016年7月、ニューヨーク州大学、ブラッド・J・シェーンフェルド氏の研究では、筋肥大を目的としたトレーニングにおける、1分間と3分間のインターバルの効果を検証しています。
21人のウエイトリフターを対象とし、8週間にわたり、8〜12回が限界となる負荷でベンチプレスとバックスクワットの多関節トレーニングを行い、インターバル1分間と3分間で効果を比較したものです。
Maximal strength was significantly greater for both 1RM squat and bench press for LONG compared to SHORT.Muscle thickness was significantly greater for LONG compared to SHORT in the anterior thigh, and a trend for greater increases was noted in the triceps brachii (p = 0.06) as well.
Senna, Gilmar W.; Willardson, Jeffrey M.; Scudese, Estevão; Simão, Roberto; Queiroz, Cristiano; Avelar, Raoni; Martin Dantas, Estélio H.. Effect of Different Interset Rest Intervals on Performance of Single and Multijoint Exercises With Near-Maximal Loads. Journal of Strength and Conditioning Research 30(3):p 710-716, March 2016. | DOI: 10.1519/JSC.0000000000001142
【翻訳】最大筋力は、1RM スクワットとベンチプレスの両方で、SHORT と比較して LONG の方が大幅に高かった。大腿前部の筋肉の厚さは、SHORT と比較して LONG で有意に厚く、上腕三頭筋でも同様に増加傾向が認められました (p = 0.06)。
【参考】https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/26605807/
つまり、筋肥大を目的としたトレーニングの場合、インターバルは1分間より3分間のほうが効果が高いことを示しています。
1分間と5分間の比較
2016年7月、イギリス、バーミンガム大学の研究では、筋肥大を目的としたトレーニングにおけるインターバルを1分間と5分間で検証しています。
16人の男性を対象とし、1回最大75%で4セットのレッグプレス等をインターバル1分間と5分間で実施し、筋合成を比較しています。
We found that the rate of myofibrillar protein synthesis increased above resting values from 0 to 4 h postexercise with 1 (76%; P = 0.047) and 5 min inter-set rest (152%; P < 0.001) and was significantly greater in the 5 min inter-set rest group (P = 0.001).
McKendry J, Pérez-López A, McLeod M, Luo D, Dent JR, Smeuninx B, Yu J, Taylor AE, Philp A, Breen L. Short inter-set rest blunts resistance exercise-induced increases in myofibrillar protein synthesis and intracellular signalling in young males. Exp Physiol. 2016 Jul 1;101(7):866-82. doi: 10.1113/EP085647. Epub 2016 Jun 2. PMID: 27126459.
【翻訳】筋原線維タンパク質の合成速度は、セット間休息を1分と5分とすると、運動後0時間から4時間まで安静時の値よりも増加し、セット間休息5分群で有意に高かったことがわかりました
【参考】https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/27126459/
つまり、筋肥大を目的としたトレーニングにおけるインターバルは、1分間より5分間の方が運動後4時間までの筋合成が優位に高いことを示しています。
単関節トレーニングと多関節トレーニングの比較
2016年3月には最大に近い負荷で、単関節トレーニングと多関節トレーニングの休憩時間を検証するセナGW氏らの研究が行われました。
1年以上トレーニングを積んだ15名の男性を対象に、神経系強化を目的とした限界が3回となる高負荷のトレーニングを1、2、3、5分の休憩を挟んで5セット実施し、その反復回数を比較したものです。
単関節トレーニングとしてマシンチェストフライ、多関節トレーニングとしてバーベルベンチプレスを実施しています。
In conclusion, to maintain the best consistency in repetition performance, rest intervals of 2 minutes between sets are sufficient for the MCF and 3–5 minutes for the BP.
Senna, Gilmar W.; Willardson, Jeffrey M.; Scudese, Estevão; Simão, Roberto; Queiroz, Cristiano; Avelar, Raoni; Martin Dantas, Estélio H.. Effect of Different Interset Rest Intervals on Performance of Single and Multijoint Exercises With Near-Maximal Loads. Journal of Strength and Conditioning Research 30(3):p 710-716, March 2016. | DOI: 10.1519/JSC.0000000000001142
【翻訳】結論として、反復パフォーマンスの最良の一貫性を維持するには、セット間の休憩間隔は MCF の場合は 2 分、BP の場合は 3 ~ 5 分で十分です。
つまり、神経系強化を目的とした単関節トレーニングでは2分間、多関節トレーニングでは3〜5分間のインターバルが最適であるということです。
神経系を強化するトレーニングについて詳しく知りたい方は【参考】筋力トレーニングで神経系を強化する方法を参考にしてください。
長めのインターバルが効果が高い理由
以上の研究結果から、これまで一般的に考えられてきたインターバルより長めの方が、神経系強化と筋肥大のトレーニング効果が高いことが分かりました。
理由として考えられるのは、セット間のインターバルをしっかりとることで適度に筋疲労が回復し、実施回数が増加、結果的にトレーニング全体を通した総負荷量を最大化できるからです。
筋肥大に関しては、オールアウト(疲労困憊)まで実施することが何より重要なため、総負荷量を最大化し筋肉を限界まで追い込めるのだと考えられれます。【参考】自重系トレーニングで筋肥大させる方法
インターバルの推奨時間
セット間インターバルについて概ねの目安をまとめます。
目的ごとに、神経系強化 ≧ 筋肥大 > 筋持久力強化となります。
目的 | インターバルの時間 |
神経系強化 | 単関節トレーニング 2分 多関節トレーニング 3〜5分 |
筋肥大 | (単関節トレーニング 2分) 多関節トレーニング 3〜5分 |
筋持久力強化 | 1分未満 |
筋持久力強化については、低負荷で高回数行うことで脂肪燃焼や全身持久力効果も狙って行うことが多く、できるだけ長く続けることが効果的なためセット間のインターバルは1分未満にするといいでしょう。
筋肥大の研究はどちらも多関節トレーニングでの結果のため、神経系強化の研究にならい、単関節トレーニングの時間も追加しました。
別の研究では、初心者については1分間程度のインターバルのほうがトレーニング効果が上がるという結果もあり、これはトレーニングに慣れるまで正しく筋肉に効かせられていないためと考えられ、上の表のマイナス1分程度を目安に行うといいと思います。
ただ年齢や熟練度、栄養状況などで回復には個人差もあるので、上の表を参考にしながら実施してみて、1分から5分の間でトレーニングの総負荷量が最大になるように調整していきましょう。
まとめ
筋力トレーニングのインターバルについては、これまで考えられていた時間より長めにとることが正解です。
個人的には多関節トレーニングである自重系トレーニングを推奨していますので、更に気持ち長めにとってもいいと思います。【参考】自重系トレーニングの効果とおすすめの種目
自重系トレーニングで多くの方が目的としている神経系強化、筋肥大を求める場合、初心者であれば2分から4分、中級者以上は3分から5分となります。
ウエイトトレーニングで単関節トレーニングを行う場合はそこからマイナス1分です。
もしこれまで短めのインターバルで行ってきた人は、すぐに効果が実感できると思います。
実践し成長を確認しながら、各々の適切なインターバルを見つけてみてください。
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